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●末尾ルコ「昭和史」~ワンショット長回しも冴えわたる『社長洋行記』の1962年の世界は? [「言葉」による革命]

●末尾ルコ「昭和史」~ワンショット長回しも冴えわたる『社長洋行記』の1962年の世界は?

末尾ルコ「昭和史と映画の話題で、知性と感性を鍛えるレッスン」

映画『社長洋行記』は社長シリーズの森繫久彌、加東大介、小林桂樹が香港へ出張する展開になるのだが、本来は加東大介ではなく三木のり平が同行する予定だった。
ところが加東大介が「香港にコネがありそう(笑)」と判断した森繫が独断で交代を命じる。
既に「初めての洋行」に浮かれて多くの「送別会」への参加で浮かれる三木のり平に対して「交代」を告げるまでが愉しい見もののひとつとなっている。
独断で交代を決めた森繫は自分ではのり平に告げることができずに小林桂樹に任務を託すのだけど、「告げられた」後の旬、いやしゅんとした三木のり平の姿を鑑賞者は忘れることができるだろうか。

『社長洋行記』は香港ロケも素晴らしく、何が素晴らしいかと言えば、その撮影である。
実は香港の景観を見せるシーンはさほど多くはないが、奥行きや色彩のバランスも素晴らしい。
それは香港ロケだけでなく、国内ロケも非常に動的で、構図も色彩配分もよく計算されている。

『社長洋行記』の大きな見せ場の一つは、銀座の寿司屋「源八鮨」のカウンターで森繫久彌と小林桂樹が呑むシーンだ。
森繫久彌の娘が「前衛芸術家(笑)」と結婚するようになり、「前衛芸術家(笑)」のような人たちを嫌っている森繫がへべれけ(←もっと使おう、こんな死語 笑)小林桂樹に愚痴を言いまくる。
このシーンは長回しのワンショットで撮られているが、とりわけ森繫の達者な芸により、退屈するどころか忘れ得ぬ充実した愉しい時間が創造されている。
同シーンの後、二人で並んでタクシーへ乗っているシーンに切り替わるが、ここでもまた堅牢な画作りにハッとさせられる。

『社長洋行記』は1962年公開。

1962年は国際的に大きな出来事が頻発した年でもある。
米国海軍は1月に特殊部隊Navy SEALsを結成。
7月にはアルジェリアがフランスから独立している。
マリリン・モンローが衝撃的な死を遂げたのもこの年であり、モンローとの関係が取りざたされていたJFケネディは、恐るべきキューバ危機を乗り切った。
そんな世界情勢から遠く離れた日本では、6月にジャニーズ事務所創業が創業している。

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いっぷく

>森繁久彌の娘が「前衛芸術家(笑)」

演じたのは若大将シリーズのマネージャー役の江原達怡ですね。泳げないので「海の若大将」では二瓶正也に交代したのですが、二瓶正也が背が高くガタイも良くて加山雄三がかすんでしまうからと、次からまた復帰したという幸運な役者です。前衛芸術家にぴったりですね。

>このシーンは長回しのワンショットで撮られているが、とりわけ森?の達者な芸により、退屈するどころか忘れ得ぬ充実した愉しい時間が創造されている。

そうでしたね。それで源八寿司の板前が沢村いき雄、これまた似合ってます。大映の若尾文子の映画なら中条静夫の役どころですね。「沢村」姓は前進座出身とわかりますが、東宝の「バイプレーヤー」として社長シリーズやクレージー映画に毎回のように顔を出しています。そういう人がさりげなく端役をやっていることも、安心して見ていられる要因になっているとおもいます。
当時は、映画各社とも俳優専属制で、ギャラ制で本数契約するスター俳優(Aホーム)と、月給制の大部屋俳優がいて、大部屋もB-1ホームとB-2ホームに分かれたのですが、沢村いき雄はキャストに名前が出ていたのでおそらくB-1だったと思われます。訃報で「バイプレーヤーとして活躍」というのは、その大部屋契約俳優のことを指していることが「本来の使い方」で、脇役が多い人のことではないんですね。でもまあ、今は専属制がないので、イコール脇役になってしまいましたが。
たとえば東宝映画ですと、主役は三船敏郎、森繁久彌、植木等、加山雄三、宝田明、三橋達也などいたわけですが、その人たちの作品は当然その他の出演者が必要で、だいたいメンバーが決まっていました。
男優ですと、大村千吉とか岩本公司とか桐野洋雄、石田茂樹、向井淳一郎、草川直也、鈴木和夫、丸山謙一郎
女性ですと、塩沢ときとか浦山珠美とか宮田芳子、藤木悠や児玉清は、途中からスター契約になったんじゃないかとおもいます。浜美枝とか団令子とかは、当然スター契約でしょうね。藤山陽子はAで桜井浩子はBだという話を聞いたことがあります。ひし美ゆり子はAかBかは微妙ですね。
足りないときは、劇団からかりるわけですが、俳優座の田中邦衛は大部屋扱いからスタートしたのに、あの存在感で、あっという間にスター格に昇進したらしいです。
そして専属制がなくなり、大部屋のとくにB-2は「芸能家斡旋所」にアウトソーシングするようになり、私もそこから派遣されるひとりだったわけですが、専属でないと芝居もうまくならないし、愛社精神もありませんから、映画の専属制崩壊は映画の質を変えてしまったとおもいます。
でまあ、何を言いたかったかといいますと、たとえ端役でも通行人でもしっかり演じた彼らによって作品に奥行きをもたらし、スター俳優たちもより一層輝きをましたのではないかということです。
by いっぷく (2018-06-11 04:16) 

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